「エネルギー・地層処分について考える市民の会」活動報告

 このページでは、2017年度の「市民の会」の活動内容を紹介していきます。

2017年7月2日 六ケ所視察の事前勉強会


 「市民の会」は、2017年7月10日・11日に、青森県六ケ所村に視察に行くことになりました。
 事前勉強会では、専門家講師の木村浩氏(NPO法人パブリック・アウトリーチ)をお招きし、エネルギーについて、地球温暖化について、日本のエネルギー政策や原子力発電について、核燃料サイクルや地層処分について、詳しくご説明いただきました。
 木村氏は、冒頭で、「地層処分の話をするときは、必ず原子力の話もセットになります。そして、原子力の話に議論が集中することが多いです。しかし、本来は、日本のエネルギー消費はどのような状況なのか、そのエネルギー消費を賄うためにどれくらいのエネルギーを供給する必要があるのか、その中で電気の割合はどの程度なのか、環境対策はどうするのか、電気を生み出す方法のひとつである原子力をどうするべきなのか、という順序で考える必要があります。今日は、そんな幅広なお話をしたいと思っています」と述べた上で、説明をしてくださいました。
 
エネルギー

 二次大戦終了後の日本は、エネルギーを石炭に依存していた(石炭は国産資源)。その後、石油依存が増えていく(自給率が低下)。1973年・1979年にはオイルショックが起こった。1990年初めからは地球温暖化問題が国際的に取り上げられるようになった。2011年3月には福島第一原子力発電所事故が発生している。2015年にはパリ協定が採択された。
 エネルギーについて考える際は、「3E+S(経済効率性、エネルギーセキュリティ、環境、安全性)」の視点が大切であると言われている。
 日本は、石炭利用が多かった頃はエネルギー自給率が高かった(1960年:58.1%)。その後石油依存が進み、自給率は低下していった(1973年:9.2%)。オイルショック後は、エネルギーの多様化が進み、自給率はやや上昇した(1990~2010年の自給率は20%弱)。2011年以降は、原子力発電の停止に伴い、自給率が低下した(2011年:11.1%、2012年:6.2%)。


 エネルギーの流れを示した「エネルギーバランス・フロー」について説明する。エネルギーバランス・フローでは、一次エネルギー供給量、最終エネルギー消費量と、エネルギー転換/転換損失が整理されている。2015年度のデータを見ると、一次エネルギー供給量19,810PJ(ペタジュール)に対し、最終エネルギー消費量は13,548PJである。供給されたエネルギーのうち、実際に使われているのは約6割で、約4割のロスが発生している。ロスの大部分は電力への転換である(2015年度は、電力3,060PJを作るために、7,195PJのエネルギーが使われている。4,135PJは発電損失として失われている)。
 日本の最終消費エネルギーのうち、電力(電気)は約25%を占めている。
 家庭部門では、電力、ガス、石油の消費量が多い。運輸部門では、石油(ガソリン)の消費量が圧倒的に多い。企業・事務所等(産業)部門は、エネルギー消費量が家庭・運輸に比べ非常に多い(2015年度:家庭1,873PJ、運輸3,077PJ、産業8,598PJ)。産業部門では、電力、石油製品、石炭製品の消費量が多い。  産業部門は、さらに製造業、その他(サービス業や事務所など)に分けられる。製造業では、鉄鋼(コークス)、化学(原料の石油)、窯業などの消費エネルギーが多い。エネルギーバランス・フローでは、熱利用に限らず、原料として用いているもの(石油など)も、「エネルギー」としてカウントされる。サービス業や事務所のエネルギー消費形態は、家庭部門に似ている。近年は、GDPあたりのエネルギー消費量が抑えられている(一部、リーマンショック・東日本大震災等の影響もある)。
 家庭部門の消費エネルギー量は、2000年から2015年にかけて、全体としては減っている(人口減が原因か)。一方で、1人あたりのエネルギー消費量は増えている。家庭部門の消費では、「暖房」「給湯」の割合が多い。近年は「動力・照明他」の割合が増加している(PC等の利用増が原因か)。エネルギー源は、昔は石炭が多かったが、徐々に灯油、ガス、電気等が増え、近年は電気が約半分となっている。
 運輸部門は、ガソリン、軽油の消費量が圧倒的に多い。電気(電車・新幹線)の消費量は、全体の1~2%である。

地球温暖化とパリ協定
 「3E+S」のうち、「環境」だけは世界全体で考えなければならない問題である。
 COP21(第21回締約国会議)で採択されたパリ協定は、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(中略)を目的とする」と定められている。その後各国が相次いで批准したため、2016年11月に発効した。
 日本は2016年11月に批准したが、COP22内のパリ協定締約国会議には間に合わず、本会議はオブザーバー参加となった。対応の遅れが問題視されている。
 トランプ大統領は2017年6月にパリ協定からの脱退を表明した。しかし、一度パリ協定を批准した国は、発効後3年(2019年11月まで)は脱退できないと決められている。また、脱退手続きにも時間がかかる。そのため、トランプ大統領の任期中には脱退手続きが間に合わない可能性が高い。今後の動向を世界が注目している。
 人為起源の温室効果ガス(特に二酸化炭素)の増加に伴い、宇宙空間に逃げていく熱の量が減り、地球の温度が上がってしまうのが地球温暖化である。メタンや代替フロンも温室効果ガスである。


 現在、温室効果ガスの1年間の人為排出量は、二酸化炭素換算で264億トンである。一方、海や植物が1年間で吸収できる量は114億トンである。年間150億トンずつ、大気中の二酸化炭素濃度が増加していることになる(年間1.9ppm増加)。
 IPCC第5次報告書によると、人為起源の二酸化炭素の累積排出量と、地球の気温変化とは、およそ比例関係にある。
 人為起源温室効果ガスの排出量は、年々増加している(1970~2000年は+1.3%/年、2000~2010年は+2.2%/年)。温室効果ガスの割合は、CO2が約8割で最も多く、その他にメタン、一酸化二窒素、フッ素化ガスなどが挙げられる。二酸化炭素は、主に産業プロセスで発生しているので、排出量をコントロールしやすい。そのため、二酸化炭素の排出量削減が特に重要視されている。
 世界のエネルギー起源CO2の排出量は、322億トン(2013年)。国別に見ると、中国が28.0%と最も多く、次いでアメリカ(15.9%)、EU(10.4%)、インド(5.8%)、ロシア(4.8%)、日本(3.8%)と続く。上位10か国(EUを1か国とみなした場合)で、世界全体の約75%を占めている。
 世界の経済部門別のCO2排出量を見ると、電力と熱生産が25%、産業が21%、運輸が14%、林業および土地利用が24%となっている。


 日本の場合は、エネルギー転換部門(発電)(40%)、産業部門(27%)、運輸部門(16%)の排出量が多い。日本においては、発電過程でのCO2排出を減らすことが、温暖化対策として重要であるといえる。
 2016年5月13日に、日本の地球温暖化対策計画が発表された。中期目標は、2030年度に2013年度比で26%削減。長期的目標は2050年までに80%削減とされている。具体的な対策は、エネルギー転換(発電)部門の対策に偏っていて、産業・運輸部門の対策がほとんどない。

電気と原子力

 日本の発電設備容量は、2015年度は石油火力15.6%、LNG火力28.2%、石炭火力15.4%、原子力16.2%、揚水10.6%、一般水力8.0%、新エネ等6.0%。かつては石油火力、石炭火力、水力が中心だったが、LNG火力や原子力の導入で多様化していった。近年は、新エネの設備容量が増えてきている。


 一方で、発電電力量は、2015年度は石油火力9.0%、LNG火力44.0%、石炭火力31.6%、原子力1.1%、揚水0.7%、一般水力9.0%、新エネ等4.7%。LNG火力、石炭火力の占める割合が高い。3.11以前は、原子力は約30%を占めていた。新エネは、設備容量は増えたが、発電電力量はそこまで増えていない。
 3.11以降、日本では原子力の代わりに石油火力の発電量が増えていた。その後、石油火力がLNG火力へシフトし、CO2排出量は少し減った。
 各国の発電電力量に占める各電源の割合を見ると、ドイツ、イタリアは新エネを進め、脱原発を進めている。しかし、EUの多くの国はフランスから電気を買っている。フランスの発電量の約8割は原子力である。つまり、これらの国はフランスが原子力で作った電気を使って産業を動かしている、という見方ができる。
 各発電のライフサイクルCO2排出量を見ると、化石燃料を用いる石炭火力、石油火力、LNG火力は排出量が多いのに対し、太陽光、風力、原子力、地熱、水力は、発電時にCO2を排出しない(建設時・運用時は排出する)。


 2015年7月に発表された2030年エネルギー需給見通しでは、経済成長はしながらも、徹底した省エネによって、2030年度のエネルギー需要は、2013年度実績の361百万kLよりも減り、326百万kL程度になると見込んでいる。その需要を満たすために投入される一次エネルギー(供給量)は489百万kL程度と見積もられている。


 2030年度の電力需要は、電化は進むものの、徹底した省エネによって2013年度と同程度になると想定されている。その需要を満たすための総発電電力量は10,650億kWh程度。電源構成は、石油3%程度、石炭26%程度、LNG27%程度、原子力22~20%程度、再生可能エネルギー22~24%程度とされている。
 2030年エネルギー需給見通し(原子力22~20%程度)を達成するためには、2030年の原子力発電は、廃炉を最小限に留め、利用可能な原発は全て再稼働し、運転開始から40年を経過している原発も20年の延長申請をクリアし運転している必要がある(新規増設がない場合)。
 原子力を取り巻く問題として、再稼動(廃炉、延長申請)、放射性廃棄物処分が進むのかどうか、フクシマの問題が挙げられよう。

地層処分
 ※詳細は、次回の勉強会にて説明したい。
 放射性廃棄物とは、放射性物質を含む廃棄物のこと。ガラス固化体は高レベル放射性廃棄物、それ以外の廃棄物は低レベル放射性廃棄物と呼ばれる。
 六ヶ所村の再処理工場は、核燃料サイクルの一端を担っている。ウラン鉱山から取り出されたウランは燃料に加工され、原子力発電所で燃やされる。燃やした後の燃料(使用済み燃料)を再処理し、まだ使えるウラン・プルトニウムは取り出し、再び燃料にする。それ以外の放射性廃棄物はガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)となり、貯蔵施設で空冷保管されている。ガラス固化体は、最終的には地層処分される計画となっている。
 地層処分とは、放射性廃棄物の処分方法のひとつで、地中に廃棄物を埋める方法である。


▲最初にお互い自己紹介をしました


▲講義の様子 皆真剣に聞いています




7月2日 六ケ所視察の事前勉強会
7月10日 日本原燃株式会社の見学
7月11日 六ケ所村読書愛好会との意見交換会
7月18日・8月1日 六ケ所村視察の共有会
8月21日・22日 福島県次世代エネルギーパーク視察
11月3日 幌延視察の事前勉強会
11月16日 幌延町視察(町役場の方との意見交換)
11月16日 幌延深地層研究センター視察)
12月26日 最終意見交換会


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